はじめに:SESという働き方の構造的問題
SES(システムエンジニアリングサービス)は、未経験からでも参入しやすく、実務経験を積むには良い選択肢です。しかし、経験を重ねても年収が上がらない、評価が不透明、といった悩みを持つエンジニアも少なくありません。
この記事では、なぜSESエンジニアの単価が上がりにくいのか、その原因を構造的に分析し、年収アップにつなげるための現実的な対策を7つに分けて紹介します。単価で悩んでいる方は、まずは自分がどこに当てはまるかを確認してみてください。
1. 自社の還元率が低い or 非公開
SESでは、自社が受け取っているエンジニア単価(客先からの契約金額)のうち、どれだけを本人に還元するかで給与が決まります。これが40〜60%程度であることが多く、還元率が低ければどれだけ頑張っても手取りは増えません。
対策:還元率を開示している企業に転職を検討
近年では「還元率80%以上」「単価連動型評価」を導入しているSES企業も増えてきています。同じスキルセットでも、環境を変えるだけで月収が数万円変わることもあります。まずは転職サイトやSES比較サービスで情報収集をしてみましょう。
2. 客先評価と給与が連動していない
現場で高評価を受けても、その情報が正しく自社に伝わらなければ給与に反映されません。さらに、自社独自の評価制度が優先される場合もあり、貢献が報われないケースが多くあります。
対策:定期的な1on1やフィードバック面談を活用
現場での実績や評価を、定期的に自社へ報告しましょう。客先の担当者からフィードバックをもらった際は、その内容を社内に共有することも重要です。実績を数字や成果として伝えることで、昇給の交渉材料になります。
3. アサインを“おまかせ”にしている
SESでは、営業担当があなたの案件を決めるケースが多く、完全に受け身でいると単価が低い、スキルが伸びない案件にアサインされるリスクがあります。
対策:希望条件を明確に伝え、スキルの棚卸しを行う
「この技術を使いたい」「この単価以上でお願いしたい」など、営業に具体的な条件を伝えましょう。その際、スキルシートを最新化し、自分の強みや実績を明確にすることで、より適した案件に入りやすくなります。
4. 可視化できる成果が少ない
SESの現場では、ただ言われたタスクをこなすだけでは評価されづらく、成果が見えづらいと単価アップの交渉材料に欠けてしまいます。
対策:成果物・提案・改善行動を記録・蓄積する
「どのような課題を解決したか」「工数削減につながる提案をしたか」など、定期的に成果を可視化する習慣を持ちましょう。これらは社内評価だけでなく、転職時のポートフォリオとしても有効です。
5. 技術力だけに偏っている
SESに限らず、現場では「人と協働できる力」も評価に直結します。どれだけコードが書けても、報連相ができない、仕様の理解が曖昧では、現場で信頼されません。
対策:現場力(ヒューマンスキル)を意識的に鍛える
報告・相談・提案などの基本的なコミュニケーション能力は、SESにおいて高く評価されるスキルです。意識的に「この現場で信頼される行動は何か?」を振り返りながら働くと、周囲の評価も変わります。
6. 現場変更のタイミングを逃している
同じ現場に長くいすぎると、技術や成長機会に偏りが出ることもあります。慣れた環境から動かないことは、成長を止めるリスクでもあります。
対策:1年ごとにキャリアレビューを行う
「今の現場でまだ学ぶことがあるか?」「次にどんなチャレンジがしたいか?」を定期的に自己分析し、ステップアップのタイミングを見極めましょう。営業担当と一緒に計画を立てるのも効果的です。
7. キャリア戦略を描けていない
日々の業務に追われ、将来の方向性を考えていないと、結果として単価アップにもつながらず、スキルも散漫になります。
対策:中長期のキャリアビジョンを描く
「数年後にPMを目指す」「次は○○系技術にシフトする」「自社開発企業へ転職する」など、明確な目標を立てましょう。それを元に、どんな案件を経験すべきか、どんなスキルを強化するか逆算して行動すると、キャリアが加速します。
まとめ:SESでも単価は上げられる
SESという働き方は制約も多く、構造的な課題があるのは事実です。しかし、だからこそ「選び方」「伝え方」「動き方」で差がつきます。受け身ではなく、戦略的にキャリアを設計し、自分の市場価値を引き上げていくことが、単価アップの近道です。
まずはこの記事で紹介した7つのポイントをチェックし、自分の状況に照らし合わせて、今すぐできるアクションから始めてみてください。